第1章 出会い
ん?ぶっひゃひゃってなに?
先輩の良いところを指折り数えながら山本くんに伝えていると笑い声がした。山本くんってこんな笑い方だっけ?と顔を上げると山本くんの隣には黒尾先輩が立っている、しかも大爆笑してる。
「笑い声もいいっ!!!!!」
そういえばたいした距離走ってなかったんだった、バカなの私?ぜんぶ聞かれてしまった。
「よくまぁ出会って1分の人間のいいところそんなあげられるね」
「クラスではもう少しまともな奴なんっすけど…」
失礼だぞ山本くん。恥ずかしさと恥ずかしさと恥ずかしさで若干涙目になりながらじとっと山本くんを睨む。
「で?なんでクロさんがかっこいいとマネージャーできないんだよ?」
「え、だってみんなのドリンクはポカリの粉だけど黒尾先輩のは愛情たっぷり手作りスポーツドリンク作るし、みんなのゼッケンは学校の洗濯機で洗うけど先輩のはうちの洗濯機で洗って私とお揃いの匂いにするしストレッチと称して先輩の筋肉触りまくるし、夜遅くまで練習した日はあわよくば送り狼になるよ!!!マネージャー業最高かな???やります。山本くんなんでもっと早く声かけてくれなかったの?」
「はぁ!?1年の時から誘ってましたぁ!」
「山本違うから、突っ込むとこそこじゃないから」
冷静な先輩もかっこいいなぁなんて思っていると体育館の方から練習始まるぞーとさっき自己紹介してくれたちっちゃい先輩が声をかけてきた。黒尾先輩は短くおうと返してから再び私に向き合うと「そんじゃ、これからヨロシク。マネージャーさん?」と言ってぽんと私の頭の上に手を置いた。
視線が絡むとまたニッと、なんだかずるい笑い方をする。
あれだけの事を言っておきながら急に恥ずかしくなった私はうつむいてコクコクとうなずくことしか出来なかった。
わざとだ、ぜったいに わざとだ。
頭ぽんぽんは好きな人にされたら心臓がひゅってなるんだよ先輩、授業で習わなかったの?