第2章 練習!
「なまえもジャージないの?私先輩に借りに行くけど一緒に行く?」
「今日金曜日だし昨日持って帰っちゃったよねー!私は知り合いの後輩に頼んでみよっと。」
うちのクラスは金曜日は体育がないので運動部の子以外は木曜日に持って帰ることが多い。
ちらほらジャージのない仲間がいて少し安心する。私は他学年にいる知り合いはバレー部の7人だけなのでいち早く借りに行かねば。黒尾先輩のジャージ借りたいけどそんなことしたら多分授業どころではない。
頼みやすい後輩組から声をかけてみよう。
「すみません、もう他の先輩に貸しちゃって」
「俺部室に置きっぱなしなんです」
「俺も昨日持って帰っちゃったっす。」
柴山くんと犬岡くん、手白くんはダメだった。灰羽くんのは多分デカすぎて着れない。
次は先輩組だ。
夜久先輩のところへ行くと「え。やだ。黒尾の借りればいいじゃん?嫁だろ?」あ、悪い顔してる。絶対面白がってる!!隣にいた海先輩もニコニコしながらうなずいている。「俺もさっき他のやつに貸しちゃったから〜」.と言ってひらひら手を振っていた。
意を決して3年5組の教室へ向かう。もうジャージ借りられなくても休み時間に黒尾先輩が見られるならお得なのでは?とプラス思考になってきた。愛のパワーは人をポジティブにしてくれる。
チラリと先輩の教室を覗きこむ。先輩の席どこかな…と様子を伺っていると「黒尾先輩ー!ジャージ貸してくださいー!」と後ろから走って来た、たしか隣のクラスの男の子が教室の引き戸をガラリと開けた。
「ひょえ!」思わず隠れてしまった。悪いことしてるわけじゃないのに、なんか変な汗かいてるし…変な声出たし。
しかも先を越されてしまった。仕方ないから灰羽くんのクソデカジャージ借りに行くか。そう思って踵を返すと「なーにしてんの。」と後ろから先輩の声がして、振り返ってみると少し怒ったような顔の先輩が立っていた。ウッイケメン。怒った顔もイイ、抱いて。
すると頭の上にジャージがぼふっと置かれた。「ホラ、ジャージないんだろ」何この布めっちゃいい匂いする。
「え…でも、今他の子に貸したんじゃ…」
「先約いるって言って断った。ったく…なかなか来ないから心配したわ。」そっぽを向きながら、珍しく歯切れの悪い先輩が「じゃ、また部活で」と言い残して行ってしまった。
え、ええ!えっ!?えっちだ!!!!
