第1章 出会い
ホームルームが終わり担任の号令の後少しして放課後を告げる鐘が鳴る。山本くんは一直線に私の元へ来て「部活行くぞ!」とぐいぐい引っ張ってくるから今さらやっぱり行かないなんてますます言いづらい。
山本くんがバレーを好きなのは話しを聞いていてとても伝わってくるし、チームメイトも全国大会へ向けて一生懸命に練習をしているそうだ。だからこそ、バレーのルールすら曖昧な中途半端な私が本当にやれるのか不安だった。真剣にやっている人たちの中に友達の頼みとはいえ断りきれなかったなんて理由でマネージャーをしていいものなのだろうか。そんな私の考えなんかお構いなしに手を引かれ気づけばバレー部の使っている体育館に着いてしまった。
考えがまとまらない私に「ここがバレー部の体育館、隣はバスケ部だから間違えんなよ!
であっちが部室、そんであっちに洗濯機とかがあってー」と説明をし始めている山本くん。もう覚悟を決めるしかないと説明を聞くことにした。
「じゃあ俺部室で着替えてくるから先体育館行ってて」
と言ってガムテープでバレー部と書かれた部室に入っていってしまった。
ふぅとため息をひとつ吐いて体育館へ向かう。
扉の隙間からちらっと覗くと先に集まっていたバレー部の人たちがネットを張ったり倉庫から荷物や得点板なんかを出して準備をしていた。
言われるがまま先に来てしまったけど、突然知らない人が来たらみなさんびっくりしない??というか私がとても気まずい。
ここで山本くんが来るまでこっそり待っていよう。そう決めて覗いていた頭をひっこめようとしたとき「…あれ?苗字さん?」と後ろから私を呼ぶ声がした。
金髪…こんな知り合いいたっけ…と記憶を辿ってみる。
ジャージのファスナーを1番上まであげていて口元が見えない。顔をしっかり見れば分かると思うんだけど…
猫背でつり目、根元が黒いから染めているのかな…と黒髪バージョンを想像してみる
「もしかして、研磨くん?」
「えっと…うん。」
一年生の時山本くんに会いにクラスに来ていたことがあって少しだけおしゃべりしたのを思い出した。
あの時は黒髪で目も合わせてくれなかったけど狐爪くんと呼んだら研磨でいい。とそっぽを向きながら返事をしてくれたのだ。たぶん人見知りするタイプなんだろうけど頑張ってコミュニケーションを取ろうとしてくれたのが印象的だった。
