第2章 練習!
「じゃ!」
と言ってみんなが集まっている方へ犬岡くんが走って行くとちょうど練習開始の時間になった。
列になってランニングをはじめたみんなの邪魔にならないように倉庫へ移動する。
格子のついた小さな窓を開けて換気をしつつ、掃除用具を取り出す。
水をバケツに汲んでぞうきんを硬めに絞り脚立を使って上から順に拭き掃除をしていく。あっという間に真っ黒になるぞうきんを洗って、拭いて、また洗ってを繰り返す。すごい汚れだ、予想はしてたけど部活の合間の掃除じゃあまり綺麗に保てないよね。ましてや男の子だ。
埃っぽくて涙目になってくる。
「マスク持ってくればよかった。」次からカバンに常備しておこう。
そう決めて残りの掃除も済ませ、乱雑に置かれた荷物や道具を棚に戻していく。よく使いそうな物は手前に、あまり動かされた形跡のないものは奥側に。
最後に埃を被ったダンボールに封印された使い道のよくわからないものを片付けようと脚立に登ったときに後ろから黒尾先輩の声がした。
「うおー!めっちゃ綺麗になってる。」
倉庫の引き戸に肘をついてすげーとキョロキョロしてる。かわいい。
「もう朝練終わりますよ。」
なかなか戻らない私に時間を知らせに来てくれたようだ。
「すみません!これしまったら終わりなんで。」
奥の棚の1番上にダンボールを片付けて脚立を降りようとすると先輩と目が合った。
「クロ」
「?」
クロ…とは黒尾先輩のあだ名的なやつだ。なんで自分で自分の名前呼んでいるんだろう?と疑問に思って首をかしげると、「まる見え。気をつけなさいよ」とだけ言って行ってしまった。
「ああぁ!!」
そういえばスカートだったし、なんなら汚れるの嫌で少し巻き上げていたんだった。
脚立を急いで片付けて先輩を追いかける。
「せ、先輩!忘れてください!!今日勝負下着じゃないんですぅう!!!!」
「そこじゃないでしょうが!」
いやいや、乙女心分かってないなぁ先輩。どうせ見られるならかわいいやつ履いている時にしてほしい。
「つーかなんでスカートなの。ジャージは?」
「昨日汚してしまって洗濯中なんです、すみません。部活に臨む服装じゃなかったですね。」
「はぁ…、とりあえず手洗ってうがいして来い。声、ちょっと変だぞ。」
「了解です!」
確かに喉が少しイガイガする。倉庫に置きっぱなしのバケツとぞうきんを持って水道へ向かった。
