第2章 練習!
「お、サンキュー」
差し出したバスケットを両手で受け取って私の好きなニッと歯を見せる笑顔で笑ってくれた。
「何今の笑顔、しゃ、写真!!待ち受けにしよう!え、すき、やば、もう一回!!!もう一回わらってください!!頑張ってよかった!!!」
携帯を構えると真顔になってしまった。真顔もかっこいいから盗撮しておこう。パシャ、とシャッター音がしてドン引きされた気がしたけど消せって言われてないからいいや、保存保存。
「まだあったかいんで冷めちゃう前に食べてください!私ボールとか片付けてきますねー。」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
先輩がもう一度お礼を言ってくれて、遠くに居た海先輩や犬岡くんたちを呼び集めて体育館の入り口の階段のところへ移動して行った。
パンくずすごい落ちるもんね。さすが先輩、気がきく。
私は転がっているボールを拾い集めてから、モップで床掃除をしながら先輩たちの会話に聞き耳を立てる。
明日はレシーブ多めにやろうとか、雨予報だから外周できなさそうとかこっちのやつもうめー!とみんなそれぞれいろんな事言っていて賑やかだ。
ちょうどモップをかけ終わった頃、軽食を食べ終えたみんながぞろぞろと体育館へ戻って来た。
「先輩!あれ手作りですか!?めっちゃ美味かったっす!」
「おれの分までありがとうございました!」
灰羽くんと犬岡くんが駆け寄ってきて私の前でびよんびよんジャンプする。
「ほんと、すげー美味かったよ!」
と言いながら夜久先輩が灰羽くんを止めてくれた。それを見た犬岡くんは自分でぴたっと止まる。空気の読める子だ。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま。」
「お粗末様でした。」
柴山くんと海先輩の丁寧コンビ。ご挨拶も丁寧だ。
福永くんがペコッと頭を下げたので、私もぺこ返しする。
2秒くらい止まってくすくす笑い始めたのでまた1人で楽しいこと考えてるんだろうな。
「ほんと苗字は料理上手いよなぁー!」
山本くんがべしべしと私の背中を叩きながら笑っている、ご機嫌なが様子でなにより。めっちゃ痛い。
「いやーほんと美味くて驚いたわ。片付けもありがとな。」
黒尾先輩が頭わしゃわしゃしてくれて、そのあとバスケットを返してくれた。先輩の手おっきくてあったかい、うへへ、すき。
「家事だけは得意なんでいつでもお嫁に行けますよ!」
