第5章 再び外食で
「で、どうですか、ぼんさん」
夜中の打ち上げ中、俺とドズルさんは適当な店のカウンター席で声を潜めて聞いてきた。店主は別の客に対応しているから、話を切り出したのだろう。
「……ああ、若くて真面目で逞しいよ」
てっきり透くんの話を聞かれたのかと思ってそう言えば、ドズルさんにはっはっはっと笑われて困惑した。誰の話ですか? 僕の話ですか? と。
「違う違う。警備員の話ね」
「あー、そっちですか」
俺が解説するとドズルさんはなるほどと頷く。だが質問は警備員の方ではなかったらしい。
「僕が聞きたいのは、ストーカーらしい人が見つかったのかって話です」
「ああ……」
そうだった。透くんがいるのはその件についてだったと半分とぼければ、ドズルさんはまた笑って、それからすぐに表情が真剣そのものになり、見つかってないんですかと小声で返された。
「見つかっていないんだよね〜」
「それって怖くないです?」
「うん、怖い怖い」
こうやってあしらっても、ドズルさんは俺が本当に怖がっていることは伝わってくるのだろう。
ドズルさんは手元のビールを一口飲み、見つかるといいですね、と真面目なトーンで言った。
「ほんとね……」
そう言いながらも、見つかってもいいのだろうかという不安も過ぎる。侵入者を見つけたら見つけたで大きな騒動にもなりそうだし、ドズルさんたちにも迷惑がかかるかもしれない。ドズルさんはそのことまで見通しているのだろうか。
「そんなに頼もしいですか? 警備員」
「え」
ドズルさんを見やれば、酒でほんのり赤くなった顔がそこにある。それは先程までのガチの方ではなく、友情として気さくに振ってきた話のように見えた。
「だって最初に言ったじゃないですか。若くて真面目で逞しいって」
「ああ、透くんね」
「え、警備員さんに名前呼びなんです?」
今度は透くんの話題へと転じた。二十代に見えるとか、短髪で爽やか系のイケメンとか、筋肉がすごいとか。
それらを聞いたドズルさんは、はははっと笑いながら、それはぼんさんの好みじゃないですねぇと意味深に付け足してきたから俺は食ってかかった。