第5章 再び外食で
「それってどういう意味よ。そもそも透くんは男よ、男」
「分かってますよ。けど、女性の警備員が来ないかなって期待しませんでした?」
「それは……したけど」
反論の理由もないので素直に認めると、ドズルさんはまた豪快に笑う。やっぱり、なんて言われて。
「夢くらい見たいじゃん、男ならさぁ」
「はははっ、下心丸出しじゃないですか」
「もうこの話はいいから」
とりあえず食おうと手元の焼肉に箸を伸ばすと、スマホからメッセージの通知音が鳴る。
誰からだろうと思えば、透くんからのメッセージ。
『宅配が届いているんですが代わりに受け取りますか?』
なんの飾り気もない一文だったが、真面目な彼らしくもあった。
何か買ったんだっけ、と思い出せないままよろしくと宅配の対応を頼むと、隣のドズルさんから誰なんです? と訊ねられた。
「宅配だって。こんな時間に大変よねぇ」
と俺は答えたが、ドズルさんの表情は意味深そうに眉間にシワが寄ったままだった。
「警備員さんに受け取りを頼んだってことですか?」
「そうそう。何頼んだか忘れちゃったけどね」
まぁどうせもう三ヶ月も前に頼んだ何かだったんだろう、と俺は気楽に考えていたが。
「今の時期、怪しくないですか? 置き配すればいいのに」
と言うドズルさんの発言で、俺は一気に不安な予感がした。
「ちょっとやめてよ、変なこと言うの」
「だってぼんさん、いつも置き配するように頼んでるって言ってませんでした?」
「それは、そうだけど……」
「それを警備員さんに受け取るように言ったんです?」
「そうね。今留守頼んでるし……」
「例のストーカーだったらどうします?」
潜めたドズルさんの声にドキリとする。そうだった。俺は、怪しい誰かが家に潜入されていて、だから警備員を雇っている。
よく考えたらこんな遅い時間に宅配が来るのもおかしいし。いや、まさか、という考えで俺がそこから動けないでいると、ドズルさんが今日はお開きにしましょうと半ば強引に帰宅することを強制された。
そんなこんなでまだ酔っていない俺はタクシーに乗り込んで自宅へと向かった。杞憂に終わればいいのだが、そうはいかなかった。
俺の家の周りに、緊急車両が停まっていたのが見えたからだ。