第4章 警備の始まり
数日後。
貴重品を引き出しの中に入れ、鍵を掛ける。俺はこの鍵をどこかに忘れそうになるから貴重品入れを鍵付きの引き出しに入れても鍵は掛けないでいたのだが、透くんにしつこく言われて鍵を掛けるようになっていた。
「鍵、忘れないで下さいね」
そろそろ外に出ようとした俺の背中で、透くんがそう声を掛けてきた。
この数日間で、俺の行動は透くんにほぼバレていた。この前家の中で鍵を失くしたのは、まだ記憶に新しい。
「失くさなければね」
俺は半笑いをしながらポケットに鍵があることを確認した。
俺は一日一回の食事のためにこうして夜中に外に出ることも多かった。今日は順調に撮影が終わったので、その打ち上げでドズルさんと外食する感じだ。
その間透くんには留守を頼むことが多くなっていた。玄関はオートロックだから防犯上はいいはずなのだが。オートロックなのに侵入してきた誰かがいるのだから余計怖い。
「行ってらっしゃい、ぼんじゅうるさん」
律儀にも玄関まで見送りに来る透くん。仕事上で俺のことを呼ぶ時はいつも「ぼんじゅうるさん」であった。だから時々「ぼんさん」と呼ぶのは素の方の透くんだろうなというところまでは仲良くなったつもりだ。
透くんも大変な仕事だろうによくやってるよなぁと思いながら。
ありがとね、といつも通りのやり取りをして家を出た。