第3章 警備システム
「それと、ぼんさん」
「何?」
「私、三十になる男なんですが、くん付けで大丈夫ですか?」
「え、三十なの?」
「はい」
それには本当に驚いた。だって見るからに二十代っぽいし。さすがに十代ではないだろうと思って勝手に二十代と思い込んでいた俺も俺なんだけど。
「もっと若いかと思ってたよ……」
「それは嬉しいです」
「嬉しいの?」
「はい。ぼんさんの言葉なら」
さっきの一瞬で打ち解けた感じはしたけど、さすがに打ち解けし過ぎはしないか。まるで告白みたいじゃん。もしかしてこの男、モテるんじゃないかまで考えて。
「じゃあ透くんって呼ぶけど……」
「はい」
「透くん、本当に彼女いないの? だってカッコイイからさぁ」
「……え?」
思わぬ質問だったよな、さすがに。透くんは何度も瞬きをしてこちらを見る。
あーごめんごめん、こんなこと聞いて。と答える必要はないと手を振ったが、真面目な性格はプライベートでも影響しているのか、ガチトーンではっきり答えたのだ。
「いないです」
命張った仕事をしていますから、と付け加えて。
「ごめん、変な話させちゃって。忘れていいから」
「……分かりました」
何か意味深な間があったが、気にしないことにしよう。
俺たちは再び、セキュリティの話に戻った。それから今後のこと。不法侵入してきた人物が見つかり次第雇用は終了するらしいが、見つからなくても契約は三ヶ月ということになっていた。
三ヶ月。見つかるのかねぇ、その短時間で。
俺は透くんと手元の書類を交互に眺めた。