第3章 警備システム
「あと他にやることなんだけどさ……」
黙ったままだと話も進まないので、空気感を変えようと切り出した俺は、透くんがぽつんと吐き出した言葉で遮られた。
「私は貴方のファンです。もし私が貴方に手を出すようなことをしたらと思うと……警備員を変えた方がいいかもしれません」
その淡々とした口調は、個人的な意見というより、仕事上で言っているような気がした。俺は透くんの座ってるソファの隣に座ってゆっくりと話し掛けた。
「透くんさ、ちょっと考え過ぎじゃない?」
「え」
透くんが顔を上げて俺と目が合った。仕事上真っ直ぐとしたその瞳は、今はただの一人の人間で、動揺を隠せないでいるのが見て取れた。俺は言葉を繋げた。
「透くん、おんりーちゃんと似てる気がしてさ。真面目な性格でしょ。ずっと肩に力入ってるもん」と透くんに気安く肩に触れると思った以上に飛び上がって俺はすぐに手を引っ込めた。「ごめんごめん、急に触って」
「いえ、その……あの……」
透くんは目を逸らして口篭る。それから最後に、内心は嬉しいんですと零した。
「だからあの、本当は、ぼんじゅうるさんの護衛をしたいです」
もう一度目を合わせてそう言った透くんは、前だけを貫くような目ではなく、少し遠慮がちな、それでいて純粋な眼差しで俺を見つめた。俺は笑顔を返した。
「だったらそれでいいじゃん」
この言葉に透くんは瞬きを何度も素早くし、それからわずかに口元が緩んだ。そういう顔をすると、少し幼く見えた。