第3章 警備システム
次の日から、俺の護衛システムが本格的に始まった。
まず、センサーの取り付けだった。
最近の機械技術というのはものすごくて、俺と警備員の姿以外を検知すると透くんの連絡先に真っ先に通知が行くとのこと。ただ、警備員が怪しい動きをした場合の連絡先をと、会社の連絡先も教えられる。警備員がそんなに裏切り行為をするのかと聞けば、可能性がゼロではないのでと返される。人のことなんて疑いたくないが、警備員にも警備員の苦労があるのかもしれないと俺は承諾した。
監視カメラはやめてくれと言ったので、カメラの設置はしなかった。なんか視線を感じるのは嫌な感じがしたし。
「なら、俺もここにいると嫌ですか」
抑揚のない声で透くんが聞いてきた。やめてよ、そのトーンで聞いてくるのはと言うと、透くんは瞬きをする。どうも彼もロボットではないみたいなので、感情の揺れ動きがあると瞬き回数が多くなるみたいだ。
「それは大丈夫だけど」俺はそんなことよりさ、と言葉を続けた。「俺のこと、前からどこかで知ってた?」
透くんの瞬きがまた多くなり、視線が下に落ちる。それがどっちの反応かまでは見極められないでいると、とうとう透くんが口を開いた。
「申し訳ございません……」
この謝罪は知らない方の意味だと思ってすぐにフォローに入った。
「あー、大丈夫大丈夫。俺そんなに有名じゃないし……」
「深夜に時々、貴方の声を聞いてはおりました」
「え?」
驚いて俺は透くんを見やる。
透くんは未だ俯いたままこちらを見ない。膝にある拳はどちらも硬く握ったままだ。それ以上の言葉は、言えないということなのだろう。
「そうだったんだ。聞いてくれてありがとね」
なんだか俺も恥ずかしくなってなんとか平静を装いながらそう言った。透くんは頷くだけだった。