第2章 私的雇用警備員
基本的に透くんは俺の家にいるということになるが、就寝時間は近くに停めてある車で寝泊まりして過ごすそうだ。だったら飯や休みはどうするのかと聞くと、飯は車中泊中に済ませてくるらしく、休みにいたっては「働き方改革」で必ず取らなくてはいけないとのことで、代わりの警備員が来るらしい。
「さすがに毎日は来なくてもいいと思うけど……」
「よくあるのは、警備員がいなかった日に被害が起こるということです。用心した方がいいかと」
まるで決められた定型文を喋るかのような透くん。仕事熱心なんだろうけどなぁ。やっぱり堅い人だなと思った。
「じゃあ、俺のところで泊まってく?」
「えっ」
半分冗談で言ったつもりだったが、透くんの表情が一瞬崩れて俺は目を見張った。透くん、わりと可愛らしい顔をしていると。
「そりゃあ女の子も放って置かないでしょ。彼女待たせちゃうんじゃない?」
「いえ、彼女はいません」
俺がふざけて言えば、透くんはたちまち真面目な顔に戻ってガチトーンで返事をする。そういうのは正直に答えなくていいのよ、と言うと、透くんは瞬きをして分かりましたと頷いた。
それから、さらにこう付け足した。
「護衛主が希望するなら、ご自宅に寝泊まりさせてもらうことは仕事上可能です。……その方が私からしても助かるのですが。護衛しやすいので」
それが本心なのかどうか、このお堅い人間から読み取ることは出来ない。だが、今すぐにという訳にもいかなかったので、その日は帰ってもらうことにした。何かあった時のための連絡先も交換して。