第2章 私的雇用警備員
「初めまして、七崎 透(とおる)です」
俺の家に来た警備員は、いかにもという体格の男だった。まぁ男の部屋に女性が派遣されることもないか、なんて淡い期待を振り払い、どーもですと自分の名前を名乗ろうとしたら、透くんとやらが制止した。
「事情はおおよそ聞いています。本名の秘密主義もありますから、ぼんじゅうるさんとお呼びします」
そんなこといいのにと言ったが、それが規則だと返される。もしも自分が危機的状況になっても、雇い主や護衛主の名前を漏らすことがないように知ることは許されないらしい。
真面目なんだなと思ったが、透くんは見るからにお堅そうな人間で、目はきりっと真っ直ぐこちらを見るし、眉毛も凛々しく口はいつもへの字だ。真面目を人間にしたらきっとこんな男になるのだろう。俺とは真反対だ。
「まぁ、とりあえず座ってよ」
「いえ、仕事中なので」
立っていられるのも息苦しいので座ってもらおうとそう言えば、透くんは頑なに立ち続ける。別にカメラとかないんでしょとなんとかソファに座らせて、今後の行動と契約の話をした。