第1章 きっかけは
それってどういう? いやいや、例え話だよと流そうとしても、こういう時のドズルさんは頑固だ。とうとう俺は言ってしまった。
「俺がいない間に、誰かが家に入ってきたんだよね」
この発言にドズルさんは目を丸くして驚き、泥棒だったのかどうなのかとひつこく問い詰められた。
俺は言うまいと思ったがドズルさんがあまりにもしつこく、最終的には詳細を話した。恐らく、俺のファンか誰かに不法侵入されたと。
「そんなのファンでもなんでもないですよ。もしかして、ストーカーじゃないです?」
「やめてよ、ストーカーなんて」
ドズルさんの言葉に俺はほぼ反射的にそうは言ったが、内心は超不安だった。鍵だって失くしやすいし、俺は独り身だ。今度誰かが入ってきたら、何されるか分からない。
と思ったが俺はそれ以上はドズルさんには言わなかった。はずなのだが、俺がよっぽど不安そうな顔でもしていたのだろう。数日後、二人で通話をしていた時にこんな提案をしてきたのだ。
「警備員雇いますよ」
「……え?」
その時には一瞬ストーカーの話なんて忘れていたのだが、ぼんさんの身の安全を守るのも僕の仕事だと思って、とドズルさんが「私的雇用警備員」の話を出したのだ。
なんでも、その警備員は個人的な理由で雇えるガードマンのような存在らしく、芸能人や歌手などの有名人たちはほとんどの人が利用しているサービス業らしい。
そこまでやらなくても、と俺はかなり渋った。別荘も買ったし大丈夫だと言い張ってみせたが、ドズルさんの言葉に敵ったことはない。納得出来るような言い方をコンコンとされ、俺はじゃあ少しだけ、と折れることになったのだ。
そうして俺の家に、私的雇用警備員がやって来たという訳である。