第13章 恐怖と勇気
自宅に戻り、買ってきたものを適当に仕舞って早々にソファへ横になる。すると自然と大きく息が吐けた。深呼吸をし、生きた心地を実感する。
俺は今、本当に危ない状況にいるんだな。
いや、あの車の事故がたまたま偶然起きただけで、家に不法侵入した人物と関係なくて、あのような場面に遭遇する確率なんて誰にでもあることなのかもしれないが。
透くんがいなかったら、俺はあそこで死んでいたのか……?
そう思うと背筋がゾッとした。体を起こし、何かすることはないかと探す。じっとしていると考え過ぎてしまってダメだ。撮影の時間はまだである。
少しくらい何かつまんでもいいかと、先程仕舞ったばかりのつまみを冷蔵庫から取り出し、再び腰を落ち着けた頃に透くんが帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「お〜、おかえり」
振り向いて一緒に食うかとキムチの入った器を見せると、仕事中ですのでと一旦は断るが、無理矢理箸を渡してソファに座るよう促せばおずおずと腰を下ろした。
「あの、ありがたいんですが……」
「辛いの苦手だった?」
「いえ、そうではなくて……」
何をそんなに渋る必要があるのかと俺は透くんへ視線を投げる。透くんはじっとテーブルの上にあるキムチを見つめていた。
「その、このままだと……間接の……あれになりますよね?」
「えっ」
そんなことを気にしてたのと俺が言えば、かなり気遣ったんですからと返される。
確かに一人暮らしが長過ぎて、入れ物から直接食べるのが習慣となっていた俺も悪いけど。それともそういうのが気になるタイプだったのだろうか。色んな人がいるもんな。俺はそう納得することにした。