第12章 外出時も
キキィー! と鋭い音がした。
何事かと振り向く余裕もないまま、視界から迫る車が異常であるとすぐに直感した。
車は中央分離帯にぶつかり回転し、そのまま歩道へスリップしてきたのを視認しながら体はそう簡単に動かなかった。こういう時というのは、声も出ないようだ。
「危ないっ」
どこかで聞いたような声を聞き、次の瞬間俺の体はどこかへと引っ張られた。
束の間だった。
車はそのまま俺の後ろの柵にぶつかり停車。俺はうつ伏せで倒れた体勢で、目の前で大破した車を見つめ続けた。
「大丈夫ですか」
「……へ?」
変な声が出た。俺は混乱する頭の中を整理しようと体を起こすと、自分は誰かの身体の上で倒れていたのだと気が付いた。この格好、どこかで見たことがあると目を上げると、透くんがそこにいた。
「透くん?」
「はい、そうです」
そう答えながら、透くんはその場で座り込んだままだった俺に手を伸ばした。痛いところはありませんか、と聞きながら。
俺は大丈夫だと答えて透くんの手を握ると、思った以上に強い力で引き上げられてすぐに立つことが出来た。
そしてここでようやく、周囲を警戒してくれていた警備員は透くんだったのだと俺は理解した。
「ありがとね」
「いえ、当然のことです」それから目の前で事故を起こした車へ視線を向けた。「仲間に連絡はもうしました。救急車と警察もすぐ来るでしょう。先に帰っても大丈夫です」
「あ、ああ、頼むよ……」
と俺は返事をしたが、自分でも思っていた以上に動揺が言葉に出て驚いた。あの日以来俺は異様に怯え過ぎているのだろう。ここは透くんの言葉に甘えておこうと、俺は先に帰ることにした。