第11章 怪しい人影
そうしてさらに一ヶ月くらいは経ったが、怪しい動きもないまま平穏な日々だった。
こうして透くんと過ごしていても、邪魔だと思ったことがなく、本当にいるのか? と疑ってしまうくらいだ。
煙草を吸いに行くくらいはとベランダへ出ることにはしたが、そういえば煙の臭いが平気なのかどうかは聞いたことがないなと思い出す。いや、苦手ならそもそも俺とすれ違った時に咳き込んだりしているものか。どうせ俺、煙草臭いだろうし。
用が済んで中に戻ると、透くんは俺が最初の時から座らせたソファの定位置に腰を下ろしていてじっとしている。手癖のようにスマホを手にすることもない。ならこの人はいつも何を考えてここに座っているのだろうと、俺は興味が湧いたのだ。
「ね、透くんさ」
俺は透くんの隣に座りながら目を合わせて話しかけた。はい、といつもの淡々とした声が返ってくる。
「性欲とかどうしてんの? ベットの下にエロ本隠していたりする訳?」
「えっ」
予想通りの反応が返ってきて、俺はニヤニヤしてしまう顔を隠さなかった。俺は続けざまに話を繋げた。
「だってさ、いつも何もしないで座ったり立ったままじゃつまらないんじゃない? スマホも開かないし、何考えてるのかなって」
俺はいつも誰にでもこんな話ばかり振っている。だが、動画内の俺はそういう場面をよくカットされているから透くんも驚いたのだろう。透くんの瞬きがより多くなって俺は満足だった。