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紫の薔薇を貴方へ

第9章 寝泊まり警備


 それから妙な沈黙。俺の言いたいことはまだ終わっていなかったが、改めて話そうと思うと恥ずかしいし自分が情けないと思い知ってしまって言いにくかった。
「えっと、契約の手続きは後日書類を持ってきますので、その時にやりますが……」
 気を遣った透くんが戸惑いながらそう言った。そうよねと俺は何度も頷き、いつまでも黙ってはいけないと思った。
「あのさ、透くん」
「……? はい」
「護衛するのに、寝泊まりもありって言ってたじゃん?」
「はい」
「透くん、俺ん家に寝泊まりしてくれない、かな?」
「え」
 思った通りの反応が来て俺はやっぱりダメかと身を引いた。
「ごめんごめん、やっぱ嫌だよな、こんなだらしない俺の部屋にいるの」
「いえ、そんなことないです」
 逃げようとした俺の手を両手で掴んできた透くんが、下から覗き込んで俺を見上げた。
 見れば透くんはいつの間にかソファから下りて跪いていて、それはそれはもうどこかの王子になったかのようで不覚にも俺はドキリとした。
「あの、透くん……?」
「すみません」
 透くんはすぐには手を離し、ソファへと座り直した。
 それからは顔を背けられてよく見えなかったが、瞬きの回数が多かったことには気が付いた。逆をいうと、それ以外の表情の変化は見られないのだが。
「その、寝泊まりの護衛は守りやすいので、今日からでも可能なのですが」透くんは慌てたように言葉を繕った。「私、ぼんさんのファンなんですよ。だからその……寝取りを襲うかもしれないんですよ?」
「え?」
 急に何を言い出すのかと思えば。というか透くんからそんな言葉が出てくるなんて。知ってたの? その言葉の意味を?
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