第8章 見舞い
病院というのは、未だ某病魔の影響でやや厳しい線を張っていて、体温計で体温を測り、見舞いも三十分だけと言われて書類の手続きをしてようやく透くんと再会した。
透くんは個室のベットで横たわっていたが、俺の姿を見るや否や体を起こそうとしたからすぐに制止させた。怪我人を起こす程俺だって鬼じゃないんだから、と言って。
「わざわざありがとうございます」
凛とした声も、横になっている透くんからは少し弱々しく聞こえた。別にいいのよ、と俺はお見舞いにティッシュ箱を渡す。病院は食べ物の持ち込みを禁じていたので、ドズルさんと相談して決めた見舞い品だった。病院にはティッシュは置いていないので大変喜ばれた。
食べ物の持ち込みが禁止になっていたなんて知らなかったなぁと雑談を終えたあと、真面目な顔つきになって透くんが話し始めた。
「実は……こちら側の問題なんですが」
真剣な声音に俺は息を飲みながら、透くんの次の言葉を待った。透くんの瞬きはさらに多くなり、拳が強く握られた。
「会社を辞めた元同僚が、会社自体に恨みを持っているんです」
「……え?」