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紫の薔薇を貴方へ

第6章 事件


「避けて下さいっ」
 俺は小さく叫びながら人混みを掻き分けると、そこにはテープを張られて立ち入り禁止区域が作られた俺の家があった。
「今調査中なので近づかないようにお願いします」
 と人混みに向かって説明をする警察に、そこは俺の家なのだと言うと、では中にいた人の同居人ですかと聞かれた。半同居人みたいなものだからそうだと答えたが、肝心の透くんの姿はない。俺の心臓はずっと落ち着かなかった。
「あの、透く……七崎透さんは?」
 俺は警察に訊ねた。
「一人男性が刺されました。もしかしたらその人かもしれないです」
「え──」
 俺は言葉を失った。もしかして、俺の家を警備していたからこんな目に遭ったのか、と。
「あの方をご存知ですか?」
 自責の念に浸る余裕を与えずに、警察官は俺を外へ連れ出し、パトカーの後ろの席に座っている男性を指し示した。知らない男が前の席にいる警察官に怒鳴りながら暴れている様子で、さっきからパトカーがゆらゆらと揺れている。
「いや、知らないです……」
 俺はなんとか息をするように答える。あの男が透くんを刺したのだろうか。こんなドラマのような話が、目の前で起きたことが衝撃だった。
 その後、自宅に入って盗まれたものはないかなどの確認をする。家の中は俺が出る時とほとんど変わっておらず、ただ、玄関前で一悶着あっただろう痕跡だけはあり、俺は目を覆った。
 その後、盗まれたものもないのでそのまま警察からは解放されたが、さすがに自分の家で寝るのも落ち着けないのでホテルを探してそこで寝た。
 朝。
 普段ならまだ寝ている時間の俺だったが、メッセージの通知音で飛び起きた。透くんからだった。
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