【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第18章 百鬼夜行
自分が愚鈍でそれに気付かなかった訳ではない。
彼女もまた葛藤していたからだ。
生きる事を諦めなかった仁美と、傑と死ぬ事を願った仁美。
どちらも仁美の本当の気持ちで、仁美を腕の中に収めても、その幸せな時間が判断を鈍らせた。
今の自分は死ぬほどの怪我では無い。
でもこうして仁美が現れたのなら、これから目の前に現れるのは悟なんだろう。
傑はそう理解すると目を細めて仁美を見た。
仁美は思ったより重症の傑に顔を顰めていた。
前世の記憶では新宿に居た為、悟に殺されたという情報しか持っていなかった。
乙骨憂太との戦いでこんなに傑が傷を負ったなんて知る由も無かった。
毎回回帰のこの時期は自分の死期だけで頭がいっぱいで、誰かを思う余裕さえ無かった。
「…ああ…傑……、大丈夫、一緒に行こう…。」
不安そうに、それでも笑顔で仁美は傑に言った。
その仁美の笑顔に、段々と傑の頭が冴えていく様だった。
「…大丈夫仁美…足手纏いになりそうだから先に行って…。」
悟が来るんだろう?
今、悟と仁美を会わせたく無い。
仁美が望んでいる様にそれが2人の死になりそうだから。
「やだ!傑と一緒に行く!」
仁美の目に涙が溜まっている。
もう結末を隠す余裕すら無いようだ。
その仁美の慌て方が全て物語っている様だった。
「…仁美、お願いだから先に行って…。」
一緒に死ぬ気も、悟に仁美を渡す気も無い。
いつもの仁美の可愛いわがままに今日は頷けなさそうだ。