【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第18章 百鬼夜行
傑の言葉は何も憂太を揺さぶらなかった。
むしろ何も聞こえない。見えない。
傑がそこに居るのに、心がそれを拒否して自身の大切な友人達だけが目に入る。
「……パンダくん……。」
いつも見ている白黒の巨体が無惨に自身の綿を千切れた体からこぼしている。
真希と同様にピクリとも動かないその光景に憂太の息が更に上がる。
「……ゆゔた……。」
普段聞かない友人の自分の名前を呼ぶ声。
その声に顔を向けた。
「狗巻くん……。」
憂太を振り絞る様に名前を言う彼は体中ボロボロで、その枯れた声と口から出ている血が、棘がどれだけ呪力を使ったのか物語っていた。
呪言を使った後の棘の後遺症を知っている。
その名前を呼ぶだけでも苦痛が襲うはずだ。
「…逃……げ……ろ……。」
もう喋らないでー。
憂太がそう願う側で、棘は焼け爛れた様な喉で憂太に言葉を伝える。
ープツリ。
そう憂太の感情が切れるのを自分自身で感じた。
初めて自分の居場所かと思た高専が破壊され。
初めて心を寄せる事が出来た友人達が目を覆いたくなる程の姿で自分の前に居る。
ソレが憂太の引き金になるのは容易い事だった。
全身が負の感情に侵される様な感覚。
大切な人達を傷つけたのは誰だ。
それは紛れも無い、棘の呪言でさえモノともしないで立ちはだかっている最悪の呪詛師。
夏油傑だ。
傑の恍悦の笑みに怒りが、憤りが、呪いが全てが憂太の感情を支配する。
「来い!里香!!」
この世界はそれを『呪い』と呼ぶのだ。
今、呪い対呪いの呪術界に語り継がれる戦いが始まる。
2017年12月24日。
特級過呪怨霊、折本里香2度目の完全顕現。