【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第17章 異榻同夢②※
「それでは皆さん、戦場で。」
そう言って傑がペリカンの足に掴まると、呪霊は空に飛び立って行った。
誰も、何の被害も無かった。
そして……誰も何も出来なかった。
「…………………。」
そこに居た全ての人間が小さくなっていく傑の姿を見ていた。
そして悟も何も言わずにただ、去って行く傑を見ていた。
傑が仁美を連れて行った?
いや……。
彼女は自らの足で『傑に付いて行った』のだ。
いつから?
どこから?
そんな疑問は悟と傑の間には不要な問答だった。
互いに道を違えたあの日から、この瞬間はもう決まっていたのかもしれない。
仁美はいつから傑の元に行くことを決めていたのだろう。
初めて出会った日から傑の残穢を纏っていた仁美。
それは悟に嫌われる為だと言っていた。
何度も何度も傑に抱かれた体で現れた仁美の目的は、今日この瞬間だった事を初めて知った。
その理由が頭に浮かんで、悟はぎゅっと拳を握った。
理由はたった1つ。
『五条悟から逃げるため』
さっき見せた仁美の笑顔が頭にこびり付いている。
………ここまでして……。
その道を選んでまで僕から離れたかったとでもいうのだろうか。
眉間に皺を寄せてギュッと目を瞑った。
顔を手で覆っても仁美の笑顔が離れない。
『生き方は決めた。後は自分にできることを精一杯やるさ。』
ああ、傑のその言葉を聞いた場所も新宿だった。
本当に呪いの坩堝の様な場所だ。
再びあの地で、今度は仁美であの喪失感をもう一度味わえとでも言うのだろうか。
悟はグッと手に力を入れた。
そして、スッと手を下ろすと、いつもと変わらない表情で生徒達の所に向かった。