【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第16章 異榻同夢※
「あっは…ん……あっ…。」
ああ…本当に呪いを解くのは真実の相手だけだ。
直哉に抱かれると悟へのドロドロした感情が消えていく様だった。
それが仮初の感情だとしても、今この瞬間は彼が必要だった。
「…はっ… 仁美…。」
ぎゅっと仁美は直哉の体を抱きしめた。
それだけの愛をくれた相手を慈しんで何が悪いのだろうか。
今はただ彼を抱きしめて名前を呼びたい。
嘘でも。
ただの衝動だとしても。
彼を愛していると伝えたい。
その愛が本当は悟にあると知られている相手でも。
「はっ…あっ…直哉さん…。」
彼の名前を呼び彼の体を抱き締める。
どうかこの想いが呪いにならない様に。
悟を愛している気持ちが執着にすり替わらない様に。
自分にはこの腕が必要だ。
ぎゅっと体を抱きしめ合って、その衝動を他人にすり替えた。
その後も悟の仁美への試し行動は続いた。
悟が遥と会う時間は仁美へ共用される。
目眩がする程苦痛な日々だった。
嫉妬と虚しさが頭を支配しておかしくなりそうだった。
「仁美さん。」
それでも正気を保てたのは仁美を名前を呼ぶ彼らの声だった。
仁美は七海に呼ばれて掴んでいた頭を離して顔を上げた。
その表情はとても念願の術式を解呪した人の表情では無かった。
仁美と目が合って、七海は顔を歪ませた。
「…術式は解呪出来たと……。」
そう聞いていたのに、思っていた仁美の表情からは程遠いかった。
「ええ、解呪出来ました…。」
あまり面識の無い七海でさえ、そう言った仁美の笑顔が作り笑いだと分かる。