【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第12章 迷走ランデブー※
横に座っている仁美に、ちょいちょい出てくる悟の手を仁美は横目で払う。
(……本当に何も感じないの?)
悟を見る周りの目線。
彼は自身の大義の為に常にこの視線の中に生きている。
仁美なら心が折れそうだ。
それでも笑顔で平然としている悟は大丈夫なのだろうか。
……少なくとも…。
彼の周りには五条悟という人物を理解してくれている人達は居るのだろう。
悟が居なくなれば、悟が守って側に居る人達の人生も変わってしまう。
秘匿死刑を保留にしている憂太なんて特にそうだ。
(……悟が簡単に私と死んでもいいと言った訳では無いと分かってる。)
だけど、少し思い出させてみようか。
天秤にかけて、仁美と一緒に居る事と。
悟が守らなければならない人達の重さを。
「……あんた何やってんの?」
歌姫が物凄い顔で悟を見下ろしている。
払っても、払っても伸びてくる手に面倒臭くなって放置していた悟の手は仁美の頭にあった。
歌姫の出現に仁美は笑顔になる。
彼女は悟を嫌っていても、悟のやりたい事は理解している。
応援こそしていないが。
「歌姫先輩。」
この殺伐とした空気に歌姫は仁美にとっても救いだった。
冥冥より親しみやすい彼女を仁美は先輩と呼んでいる。
歌姫は仁美の頭の上にある悟の手を払うと、仁美の隣にドカッと座った。
「仁美、五条にセクハラされてるならすぐに言いなさい!」
キッと悟を見て歌姫は言った。
「失礼な、合意……。」
「セクハラです。」
悟の言葉に被せる様に仁美が言うと、悟はショックを受けた様に肩を落とした。
目隠しをしても、その落胆の色はよく分かる。