【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第11章 自暴自棄※
人は本当に恐怖を感じたら声が出ないモノだと初めて知った。
震える唇が、息を吐く事すら忘れている。
特級呪霊と出会ったって、こんな恐怖は感じないだろう。
ただ、ただ、悟がジッと自分を見ている。
それだけで体が硬直して、声も出なかった。
「……震えてるの?仁美?」
サァーっとカーテンがなびいて、月光が部屋に入ると、黒い人影はやっと悟を映し出した。
声が、見える人影が悟と認識しているのに、今だに声が出ない。
それは無表情で、目だけを大きく開けて仁美を覗き込む悟から出る言いようの無い圧迫感が仁美を襲っているからだ。
「っ……はっ……悟……。」
やっと息を吐けて、悟の名前を呼んだ。
悟はそれでも仁美から目線を外さず、ジッと見ている。
何故こんな時間にここに来たのか。
そんな無意味な質問は必要なかった。
「…傑の残穢が、憂太と棘の現場に残されていた。」
悟に対する答えを間違えれば殺される。
その気持ちが、一瞬にして全身を駆け巡った。
「傑は、何を企んでる?」
悟の手が顔を隠している仁美の髪をそっと退けた。
「……知らない……。」
仁美はぎゅっと目を細めて、悟を横目で見た。
とてもじゃ無いが、今の悟を正面から見る事ができなかった。
仁美の部屋着は薄着で、彼女の体にはしっかりと情事の痕が残っている。
悟はスッと指を動かして、その痕に触れた。
「何故増えている?」
一つ一つゆっくりと、仁美の痕をなぞって言った。
耳の奥で自分の心臓の音が響いている。
気を失いそうな緊張感の中で、仁美は目を瞑った。