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2度目の人生は鉄華団 三日月

第1章 転落



一歩一歩上に向かう。

ガエリオの声が聞こえて登ることだけに集中するとカルタが手を差し伸ばしてくれる。

その手を取れば終わりだ。


もう少し…


ズルッと足が滑った。

驚いた顔のカルタが遠のいていく。

「ティフェ!」

カルタとガエリオの声が聞こえる。

どうやら夢は覚める物らしい。

ドンっと大きな音がする。

でも痛くなくて暖かい何かに包まれていた。

まるでカルタに抱きしめられたみたいに…

「ティフェ!」

『ガエリオ?』

ガエリオの声に目を開けるとマクギリスの顔があった。

綺麗な髪が揺れている。

宝石の様なエメラルドグリーンの瞳は私が好きだった物。

『マク、ギリス?』

「大丈夫?」

私を抱きとめたマクギリスは無表情だった。

彼が優しく仮面を被るようになったのはいつだろう。

「ティフェ!どこか痛む?」

ガエリオに引っ張られて起こされると、カルタが慌てて木から降りくる。

私はぎこちなくマクギリスを見る。

初めて彼に助けられた。

初めて彼の胸に触れた。

あっけなく触れられた。

指ですら触れることが難しかったのに。

『ありがとうマクギリス。でも、もう私を助けないで』

彼と結婚しても幸せにならない。

私の脳内はいつもマクギリスだったが、彼の目は私に興味がない。

少し驚いた顔をしてから視線を下げるマクギリスは自分の手を見ていた。

「ティフェ!本当に大丈夫なの!?」

『うん。マクギリスが守ってくれたから』

「まあ、よくやったじゃない」

頬を少し赤らめてマクギリスを見るカルタ。

私もそうだった。

でもそんな事をしても意味がないのだ。

彼が好きなのは今後生まれてくるガエリオの妹なのだから…

「次は僕が受け止めるから!」

『いいよ、重いから…それに自分の身は自分で守るから』

誰かに任せるなんてもう嫌だ。

伸ばせば届いたのだ。

私もカルタの様に自由にやってみたい。

「ごめん」

なぜかマクギリスに謝られた。

「気に障ったのなら、もう触らない」

自身の手を見ていたマクギリスが私を見る。

どうしてそんな事を言うのだろう。

『そんなことないよ。私の方こそ触ってごめんなさい』

私と握手した時、マクギリスはいつも表情が固まっていた。

きっと私に触りたくなかったのだろう。
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