第5章 バルバトス(2話)
三日月が目覚めたのでバルバトスを置いたままの機材を取りに向かう。すると見慣れた黄色い車体に側に立つのはフワッとした髪を持つ可愛い少女、アトラが立っていた。
『アトラちゃーん』
髪を揺らして顔を上げるアトラは笑顔だったがティフェを見て驚いた顔をした。
「ティフェ怪我してるの!?」
そばまで寄って来たアトラにティフェは安心させようと微笑む。
『私は大丈夫だよ』
「でも」
胸元についている血を見て
アトラは不安そうだった。
これを三日月の血だと言ったら
もっと心配するんだろうな。
「怪我してないよ」
安心させるために握り拳を作って答えるが
アトラの顔は曇っている。
さらには後ろにいた三日月の
大量の鼻血の跡を見て更に眉が下がった。
「三日月…平気?」
何を聞いていいのか
絞り出したのはアトラの声はか弱かった。
「うん、ありがとうアトラ。
今ちょっと急いでるから、あとでね」
横を通り過ぎていく三日月。
「アトラ、大丈夫だから」
彼女の頭を撫でて安心させようと笑う。
アトラの気持ちが痛いほどわかるから尚更だ。
「また後でね」
「うん」
手を振って三日月の後を駆け足で追う。