第4章 鉄血と血と(1話)
地面から伝わる重たい振動と砂埃。月が綺麗だった夜に弾丸の雨が降り注ぐ。
『麗しいお嬢様が来たと思ったら、今度は敵襲?慌ただしいねー』
MWモビルワーカーを操縦して敵機を銃で撃ち抜いていく。現れたMWはギャラルホルン。その名は懐かしいく忌々しい。事情はどうあれ、話に聞いていたギャラルホルンは子供を容赦なく殺していく怪物にしか思えなかった。
苦しい、地下に囚われていた時の感覚を思い出す。
煮えたぎる闘志が瞳を真っ赤に染め上げる。目の前で味方のMWが破壊されていく。憎い。
『やめろ!!』
弾丸を避けながら近づいて弾を当てる。最新の機械対、中古の機械。威力も弱く接近しないと期待はない。遠くではなんの意味もない。
味方の悲鳴が響く。知った顔の声が消える。また居場所を奪うのか。
夢中になって敵を追っていたのが悪かった。気づいた時には敵に囲まれていた。撃たれる前に打ってやる。絶対絶命でも闘志は消えない。銃を構えると三日月とシノが現れて敵を散らしてくれた。
「ティフェ!気張んのはいいけど無茶すんなよ!」
シノの声に奥歯を強く噛み締める。
『これぐらい平気!私に構わないで!』
こりづに敵に向かおうとすると、三日月が乗った機体が進行方向を塞いだ。
『ミカ!どいて!』
「ティフェ、俺のそばから離れないで」
『それじゃ効率が悪いよ!』
「落ち着いて、言うこと聞いて」
ティフェのあまりに無鉄砲な戦い方に心配した三日月が彼女を止める。冷たく言われてティフェは押し黙った。
『でも…でも』
悔しいとハンドルを強く握りしめる。思いとともに真っ赤に燃える瞳と震える個体物質。彼は戦いたいと言っている。ティフェは今にも敵陣に突っ込みたかった。
「ティフェ、俺と一緒に戦って」
三日月は様子のおかしいリリィに気づいて落ち着かせる様に話しかける。一緒に?三日月は共に戦ってくれるんだ。
『うん。分かったよミカ』
ギャラルホルンを倒す事は最優先ではあるが、ここにいる機体を倒しても上にダメージがいくわけではない。今はオルガや三日月の指示に従おう。