第4章 鉄血と血と(1話)
翌日、雪之丞に頼まれた回線やら工具の中古品を段ボールに入れて運んでいると目の前に三日月を見つけた。
『ミカー!おはよー』
嬉しくて早足で彼に近づくと、後ろに金髪の女の子がいた。汚れを知らない綺麗な黄金色の髪に真っ赤なドレス。肌もとても綺麗で目が大きい綺麗な人だった。驚いている私に三日月が反応する。
「ティフェ!」
立ち止まり、女の子をじっと見つめていたら三日月が近づいてきて段ボールの中身を覗き込んで眉をあげた。
「これは?」
三日月にギュウギュウと配線が見えている段ボールの詳細を問われたのでハッとして簡潔に返事を返す。
『雪之丞のお使い』
「持とうか?」
『いいよ、これも鍛錬!』
女の子の事を気にしつつも三日月に笑いかけて申し出を断る。三日月の後ろにいた金髪の女の子、クーデリアが驚いた顔でティフェを見下ろす。
「女の子?」
クーデリアの声は綺麗で張りがあった。カルタと同じく自信に満ちた声。綺麗な金髪は艶やかで赤いドレスは懐かしく感じた。
『お嬢様?』
「え?」
ティフェの言葉に驚いて声が漏れたクーデリア。今日来ると聞いていたがこんな所で会えるとは思ってもいなかった。彼女の白い手袋は何故か片方だけ脱げていた。
『お嬢様!』
アトラ以外では久しぶりの女の子に興奮が隠しきれず、三日月の隣からずいっと彼女の前に踏み出す。段ボールが揺れてネジがポロッと落ちるのも気にせず驚いているクーデリアに近づく。
顔を寄せて匂いを嗅ぐと困惑し驚いて一歩下がるクーデリア。
想像通り花のようないい香りがした。
『わぁ、…やっぱりいい匂い!』
「に、匂い?」
「ティフェ、落ちたよ」
思わず聞き返すクーデリアに、三日月は興味なさそうに段ボールにネジを戻した。
『ミカ、やっぱりお嬢様はいい匂いするよ!』
「そうだね」
分かったよと同意する彼にティフェの笑顔は深まる。