第4章 鉄血と血と(1話)
『気安く近づくんじゃありません』
「ちょっとぐらいいーじゃねーか!減るもんじゃねーし」
『気持ちの何かが減る気がする』
「んだそれ!」
臭いと言われたら流石に傷つく。無理強いしない彼はつまらなそうにスプーンを口へ運んだ。そこへ水を持ったカタキが近づいてきた。頬にガーゼをつけた彼に三日月が心配して声をかける。
三日月は優しい。すぐに周りの変化に気づく。
「平気っす、いつもの事で」
カタキは困った様に眉を下げ、安心させる様に笑った。CGSは子供をいたぶる大人が多い。マルバに抗議すればいいのだが、父に隠れて仕事をしているティフェは目立つ事をしたくなかった。申し訳ない気持ちでタカキを見上げると彼は優しく笑ってくれる。
彼より歳上なティフェが既に成人している事を知っているのは、オルガと三日月とアトラの3人だけ。
見た目は骨髄に埋め込んだ個体物質のせいで成長が止まり少女のまま。前世の様に成長していたら今頃ナイスバディーで婚約者もいたのだが今世では180度世界が変わっている。
これでいいのだ。
カルタを死なせない為にも、父を殺した婚約者に復讐するためにも、私は力が欲しかった。
カタキから水をもらうとユージンが口元を綻ばせる。
「でもあれだな、社長もよ。口だけの社員様より、結局は俺たちの力を認めてるって事じゃねえの?で、これをきっかけによ。社員の奴等出し抜いて…俺らが一軍になって!」
「いくらマルバの親父がもーろくしたって、使い捨ての駒くれえにしか思ってない俺らを認めるわけねえだろ」
オルガの真逆の意見に気に食わないユージンの眉が吊り上がる。
「おい!俺ら三番組隊長のお前がそんなだから、いつまでたってもこんな扱いじゃねえのか!」
「やめなよ、ユージン」
「うっせえビスケット!てめぇは黙ってろ!だいたいてめぇは…っ!」
黙って聞いていた三日月がユージンの耳を引っ張って眉を寄せた。
「喧嘩か?ユージン俺は嫌だな」
彼は痛みに顔を歪め「とれる、とれるって!」と涙目で弱々しく叫んでいる。
「喧嘩じゃねえよ、これくらい…なぁ?」
「あ、ああ!あったりめえだろ」
いつもの事にティフェはタカキから貰った水で喉を潤した。