第8章 土方 揺れる匂いとその動き
「さっき朝飯食ったばっかりだろ。腹減ってんのか?
それとも眠たいとかか?昨日めちゃくちゃ早く寝てただろうが。」
私が言いそうな言い訳を、先に出しては1人で論破。
「…調子が悪いです。」
「なんだ。腹でも痛ぇのか。」
違う。私は首を横に振る。
「頭か?」
答えはNO。
「髪の毛…」
「…は?」
「髪の毛の調子が悪いです…。」
そう。今日は髪の毛の調子がすこぶる悪い。
少し癖っ毛なこの髪には度々苦労させられている。
「アキ、もっとまともな言い訳考えろ。」
「私はいたって真面目です!これは切実な問題ですよ!」
女の子ならこの気持ちわかるはず!
少し髪の毛がブワってなってるとか、いい方向に髪の毛がクルンとならないとか、結構気になるよね?!
「別にいつも通りだろうが。」
土方さんはぐるっと私の髪の毛を見まわす。
「今日本当に髪の毛いうこと聞かないんですってば…もう今日外出る気失くしました。」
「結べばいいだろうが。いっつも結んでるだろ。」
基本的にはポニーテール。
けど今日はなかなかまとまらなかったから、諦めて下ろしている。
「なんか今日は上手くできませんでした。」
私の態度から真剣さが伝わったのか、単純に呆れたのかはわからないが、
土方さんが大きくため息をついた。
「アキ、俺の部屋にこい。」
そう言って歩き出した土方さんの後ろを少し遅れてついていった。