第5章 高杉 人形が恋をする
「私は人形ですもの」
彼は何故か私を抱かない。
正直、それは嬉しいような悲しいような。
「アキ、外の世界に出たいか?」
その問いかけに、
窓へと視線を移す。
格子がしてある窓。
その窓はこの小さな部屋から出られないことを感じさせるのに十分なものだった。
「外の世界は素敵ですか?」
「…全くいいもんじゃねぇよ。
多分ここより汚い。」
彼は私を腕の中に閉じこめてそう答えた。
「光が強ければ強いほど、その後ろにできる影は濃い。
お前はそれに耐えられるか?」
「今更怖いものなんてございません。」
無意識に諦めとも取れるだろう小さな笑いがこぼれた。