第5章 高杉 人形が恋をする
「アキ、俺がお前を買う。」
「え?」
腕の力が弱まったと思うと、
顔を上に向けられた。
いつもそうだ。
この人と目が合うと、心臓が止まりそうになる。
冷たかった血液が急に熱を帯びて全身をめぐる。
「お前の目に光が見えた時にどうなるか興味がある。
俺についてこい。」
答えなんて聞くまでもないかのように口付けられた。
それは深く深く。
呼吸もままならないほどに。
「ん…たか、すぎっさま…」
「晋助でいい。」
「え…し、晋助様…」
顔が火照る。
頬を撫でる彼からの温度のせいなのか、
それとも私の内側から湧き上がる熱なのか。
「…まぁ今はそれでいい。」
少し不服そうな表情を浮かべながらも
そこに冷たさなんてものはなかった。
「お前を人形のままになんかさせておかねぇからな。」
そう言って、妖艶な笑みを浮かべ、
また深く口付けをされた。
あなたが私に触れるたびに、
とっくに私は人形じゃいられなくなっているのです。
脳が熱くて、
身体が熱くて、
心臓が止まりそうになるのです。
あなたがいれば、私は人間になれるのです。