第4章 万斉 乙女心
まぁ、急に呼びだしたわけだから、
もちろん来ているはずもない。
私はベンチに腰掛けて彼を待った。
「アキ。」
後ろの方へ頭だけ向けた。
彼の顔には呆れたような、
でも優しい笑みが浮かんでいた。
「急に呼び出してごめんなさい」
万斉さんは私の隣に座り、
すぐさま私を抱きしめてくれた。
子どものように万斉さんの背中に手をまわし、抱きしめ返した。
「もう慣れたことでござるよ。」
頭を撫でながらそう言ってくれた。
「万斉さんが好きすぎてどうしよう。」
「呼び出された時と内容が違うんだが?」
「悲しいのぶっ飛びました」
「相変わらず乙女心はわかりかねる。
新曲にも使えないレベルでござる。」
さっきの泣きたい気持ちは本当にぶっ飛んでいた。
万斉さんの暖かさと匂いと声と。
彼の全てで私の心は落ち着いていた。