第1章 Prologue
ブオオオ〜
「うわぁ〜!船が鳴いた!」
船出港の合図、汽笛が鳴る。
今日、俺たちは豪華客船に乗っていた。
「違いますよ。歩美ちゃん。船は鳴きませんよ。動物じゃないですから」
「えーでも歩美にはそういう風に聞こえたもん」
「そんなわけねぇだろ」
「これこれ。3人とも喧嘩するんじゃない」
博士が歩美たち3人を叱っているのを尻目に辺りを見渡した。
それはともかくさすが鈴木財閥がお金を掛けただけある。
隅から隅まで全て豪華絢爛だ。天井には普通ではお目にかかれないような豪華なシャンデリア、地面には赤い絨毯、階段には金色の装飾が施されており、この船の壁にはゴッホやレオナルド・ダ・ヴィンチといった有名な画家が描いた作品が立派な額縁に収まって、飾られていた。そして何よりも今俺たちが居るここには大きな窓がありそこから外の様子が確認できていた。まだ出航前ということもあって今見えているのは東都ではどこにでもあるようなマンションやホテルと言った建物だが出港すれば綺麗な海や魚たちを見ることが出来るだろう。
この船の名前は『マーメイドバブル号』と言ってそのまま直訳すると『人魚の泡沫』となる。名前の由来はこの船は鈴木財閥と共同開発でスウェーデンが作ったのでそのスウェーデンでは有名な童話、アンデルセン童話の1部の人魚姫になぞらえて名付けられたそうだ。
「園子、本当にこんなにすごい船に私たちが乗って大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。私に任せてよ。なんてたって蘭は柔道の大会で優勝したお祝いがしたかったもの」
不安そうに尋ねる蘭を園子がいいわよいいわよと軽いノリで返していた。
いつもの平和そうな二人のノリに苦笑しながらまた俺は辺りを見渡す。
「それにしてもなんであの人がいるのよ」
険しい顔をしながら俺を睨みつけてきたのは灰原哀だ。
「あの人……ああ、小五郎のおっちゃんが来れないから代理保護者的な感じで来たらしいよ」
俺は蘭や園子にニコニコと笑いかけながら談笑をしている安室透を見た。