第1章 Prologue
豪華客船の宿泊日数は全部で1週間。ニーゴのみんなに話したところ3人とも総じて楽しんでおいでと言われたので思いっきり楽しむつもりだ。まあ、夜中の作業にはできる限り参加するつもりだけど。それでも俺は非常に楽しみだ。集合場所は船の中のエントランスだ。けど、初日からとあるハプニングが起こった。
『え!?鳳さん、来れなくなっちゃったんですか!?』
その叫びは船のロビーで響いた。周りの視線に気がついて人がいない端っこに移動して声を小さくした。
『うん。ごめんね。紫苑くん。楽しみにしててくれたのに……こほっ、こほっ……』
鳳さんは風邪をひいてしまったらしく、来れなくなってしまったようだ。
『無理して喋らなくていいですよ。というか鳳さんが行けないなら僕、降りた方がいいんじゃ……』
『ああ、それについては問題ない』
『その声は……慶介さん……?』
突然電話の先の声が男性のものに変わったので一瞬驚いたがその声の主が知っている人だと知ると俺はいつもの口調に戻した。
『問題ない……とは、どういう意味ですか?』
『えむの他の2人の知り合いも来てることだろうしせっかく来てもらってるのに返すのは酷だからな。紫苑も他の2人も同様に船で泊まれるようにこちらで手配した』
『え、いいんですか?そんなことしてもらっちゃって』
『ああ。問題は無い。料金は鳳家持ちで問題ないよ。いくら風邪とはいえこちらの不始末だからな』
『そう、ですか……ありがとうございます。では引き続き船に留まりますね』
『ああ。そうして貰えると助かる。とりあえずえむの知り合いの他の2人もと合流して貰えると助かるんだが……』
『あの、僕、えむちゃんの他の2人の知り合いが誰なのか聞いてないんですよね。姉からは僕がとてもよく知っている人だと伺っていますけど』
『言ってなかったのか……済まなかった。その2人の名前は_____』
その2人の名前を聞いた瞬間ちょっと不満げになった。だって、確かにその2人は俺がよく知る2人だ。けどまさかあの二人だなんて聞いてない。でも仕方がないのかと俺は表情を戻した。
『分かりました。とりあえず二人と連絡を取ってみますね』
『ああ。楽しんできてもらえると助かる』
『了解しました』
電話を切って俺はまたとある二人に連絡を取った。