第1章 Prologue
『あ、うん。バイトはついさっき終わったところだよ』
『そっか。お疲れ様。でも、零が電話してるってことはそれだけが用事じゃないんでしょ?なにかあったの?』
『実はね、今日帰りに鳳さんに会ったんだ』
『鳳さん……ああ!えむちゃんと?……そういえば零とえむちゃんってバイト、同じだったね』
『職場は違うんだけどね……それはともかく鳳さんに今週末豪華客船に乗らないかって誘われたんだ』
『え!いいじゃん!豪華客船!いいなぁ〜、なんて船なの?』
『えっと、確かマーメイド、えっとなんだっけ?』
『マーメイド……あ!マーメイドバブルのこと??確か数日前に鈴木財閥と鳳財閥が発表した船のこと?!』
『確かそうだよ。……瑞希、詳しいね』
『結構最近のニュースとかで話題になっててそれで知ったんだ。でも、その船に乗れるなんていいじゃん!楽しそうじゃん!行っちゃえばいいじゃん!』
『でも、鳳さん、二人知らない人、連れてくるって……』
『あーそういうことね……ねえ、今そこにえむちゃんいる?』
『いるけど……』
『じゃあ、えむちゃんに変わってくれる?』
『わかった』
近くでウロウロしていた鳳さんに電話を渡して代わってもらえるよう言った。そこからなにをふたりが喋っていたのかは知らないけど電話を俺に戻してきた。
『大丈夫だよ。零』
『え……』
『さっきえむちゃんから聞いたけど、その知り合いはボクも零もよく知ってる人だし大丈夫だと思うよ』
『俺も……瑞希も……?』
『うん。だから安心していきなよ』
『……』
『もしその人たちが変なことしたらボクが絶対止めるから、ね?いい思い出にもなるし、ボクは行けないからさその分紫苑に楽しんでいってもらって欲しいんだよね』
『……』
『どうかな?』
『……わかった。瑞希がそこまで言うなら俺、行くよ』
『そっか……準備ぐらいならボク手伝うよ!』
『ありがとう。じゃあ、またあとでね』
『うん。気をつけてね!』
『はーい!』
電話を切って鳳さんに行けることを話した。
「ほんと!?ありがとう!じゃあ後日、また連絡するね!」
「わかりました!誘ってくれてありがとうございます」