第1章 Prologue
3日前ー
「え、豪華客船、ですか?」
普段の俺なら絶対口に出すことの無い単語を出したのはこの目の前にいる彼女のせいだ。ここフェニックスワンダーランドでバイトを終えたので帰ろうとしたところ彼女……鳳えむさんによって引き止められた。
「うん!今週末ね、鳳財閥のだいひょーとしてマーメイドバブルっていう船に乗るんだけどちょうど知り合いを3人連れて行っていいらしいから零くんには来て欲しいんだ!」
「なんで僕、なんですか?司先輩だとか草薙さんとかの方がいいんじゃないんですか?そもそも自体僕とそんなに関わったことないと思うんですけど」
実際関わったことがあるのは同じバイト先だというそれだけだ。同じバイト先と言っても職場が違うので滅多に鉢合わせすることがないのだ。
「うん。最初は司くんとか寧々ちゃんを誘おうって思ったんだけど2人ともお家の用事があるらしくて行けないみたいなんだよね!だから最近遊べてない零くんなら誘えるかなって思って声を掛けたの!あ、もちろん用事があるなら断ってもいいよ!」
ちょっとよく分からないがまあ、とにかく俺を誘ってくれたのだ。神高も宮女もあと3週間ほどで夏休みが終わるという時期だが休みは休みだ。なのでどうせ俺も鳳さんたちも予備校やら絵画教室やらがない限り暇なのだ。
「うーん……そういえば連れて行っていい人数3人って言ったっけ?残りは誰か来るんですか?」
「あぁ、それなら決めてあるんだ!」
「なるほど……んー……」
本音を言うと行きたくないが正解だ。残り2人、誰が来るかは知らないがもし残り2人が知らない人なら俺はなるべく関わりたくない。そもそも瑞希と一緒に行けない時点で嫌なのだ。いやでも、瑞希、今週末はバイトって言ってたよな。俺が行かないにしても瑞希は来れないのか。
「ちょっと待ってて欲しいんですけど、鳳さん。瑞希に聞いてみますから」
「瑞希ちゃんに?わかった!」
『もしもし、瑞希』
『ん?どうしたの?零。こんな時間にというか零が電話かけてくるなんて珍しいね。いつもはメールで済ませるのに。バイトが終わったの?』
俺は悩んだ結果電話をすることになった。こんなことぐらいメールで済ませられると思ったが直ぐに返事を聞きたかった俺は電話にしたのだ。