第6章 ドズぼんおん
「ありがとうございます」
「はははっ、それくらい安いもんだよ」
ドズルさんの笑った顔が好きで、もう一度頬に触れるとにこりとしてくれた。今がチャンスかもとぐっと背筋を伸ばし、ドズルさんの唇めがけて俺の唇を近づければ、触れるだけのキスに成功した。
「あ、ドズさんこそズルいじゃん!」
水をコップに入れて戻ってきたぼんさんが、そう大きな声で騒ぎ出して俺の隣に戻ってくる。
しかしドズルさんからの返事がなくて、もしかして下手なキスだったのかなと俺が振り向けば、そこには呆然としたままのドズルさんがいて驚いた。この人が動揺しているところなんて、めったにないのに。
「ははっ、おんりーちゃんからのキス初めてだった?」
とぼんさんに言われ、そうか、今まで自分からはしたことなかったかもともう一度ドズルさんを見れば、もういつも通りの表情に戻っていてぼんさんに食ってかかっていた。
「そんなことないそんなことない。ただちょっと珍しかっただけ」とドズルさんは言う。「そういうぼんさんだってどうなんですか」
「俺? 俺はね……」
ぐいっと引き寄せられた俺は、ぼんさんにされるがままの勢いで、頭と頭がぶつかった。
そこに間髪入れずにぼんさんの唇が触れて舐めるキスをされる。急にはやめてと頭では叫んでも、体はしっかりとぼんさんを抱き返してしまう。
「卑怯だなぁ」
「でもおんりーちゃんは嫌がってないし」
その後ドズぼんが俺の目の前でまたキスの仕返しをした。二人のキスは熱っぽくて、見てはいけないと思いながらじっと見てしまう。
そんな俺に気づいたのか、遠慮がちなドズルさんがぼんさんの胸板を押して離れようとした。だがぼんさんはドズルさんをさらに抱き寄せてもっと深いキスをする。それからぼんさんは片目でこちらを見た。わざと見せつけているのだというのは、もう前から分かってはいた。
「次はおんりーちゃん」
とぼんさんが俺にすり寄って来ると、僕もとドズルさんも体を押し付けるように近づいた。けれどもドズルさんは、猛攻なぼんさんのあとでどこかヘロヘロだった。ドズルさんはとうとう俺に寄りかかってきた。
「ドズルさん、大丈夫ですか……?」
「ん、おんりーのそばにいたら大丈夫」
「え……わっ?!」
寄りかかった勢いで首筋を舐めてきたドズルさん。すかさずぼんさんの舌も伸びてきて、のぼせるのも時間の問題だろうと思った。