第6章 ドズぼんおん
「ちょっとおんりー」
「おんりーちゃん?」
ドズぼんの二人が、息ぴったりに俺の体をもう片方の手で止めた。
「あの、喉が乾いたので水を……」
と言い終わる前にはドズルさんが俺の手から饅頭を取り上げ、ぼんさんはその指先で唇に触れてきて言葉を遮ってきたからもうだめだと思った。
「おんりー、最後まで食べてね?」
「ドズさ……んんっ」
ドズルさんの手渡しで饅頭を口に入れられ、食べるしかなくなった俺。その間ぼんさんが目を細めてじっとこちらを見つめながら頬に触るから体が熱くなるのを止められなかった。
「いいねぇ、おんりーの饅頭」
「ぼんさ……んっ」
ぼんさんの唇が近づいてきて俺はすっかり受け入れてしまった。まだ飲み込めていない口の中の饅頭をぼんさんが舌で掬いとって離れる。舌なめずりしてこちらを見るぼんさんがあまりにも妖艶で、とても四十代の男性とは思えなかった。
「あ、僕も食べたい食べたい」
言うて三十代らしからぬ無邪気さを見せたドズルさんは、そう言って俺にキスをしてきた。二人に連続で口付けを交わされて俺は腰を抜かしてしまったが、さっきの勢いで饅頭は飲み込んでしまっていた。
「あ、ないのかぁ」
俺から離れながら残念がるドズルさん。すみませんと言いたかったが、声になったかは分からない。次の瞬間、ぼんさんが俺の目の前でドズルさんにキスをしたからだ。
「……どお? おんりーちゃんの饅頭は」
キスはすぐに終わったが、ぼんさんがドズルさんにニヤニヤしながら聞いた。ドズルさんもこれには不意をつかれたみたいで、珍しく赤面していた。俺が思わずその赤い頬に触れると、ドズルさんが手に触れながら、呟くように美味かったけど、と答えた。
ぼんさんは満足げに笑って俺たちから離れた。どこ行くんだろうと思ったら、キッチンに向かって水を取りに行ってくれたらしい。残されたドズルさんは、俺を抱えてソファに座り直してくれる。二人に絆されている内に、ソファからズリ落ちそうになっていたみたいだ。