第6章 ドズぼんおん
土曜日。
玄関の呼び鈴が鳴り、どうぞと扉を開けたら二人の男性がそこで待っていた。
「お邪魔します」
「どーも〜」
ドズルさんは律儀に会釈をして入り、ぼんさんは気さくそうに軽く頭を下げながら中に入ってきた。
「温泉、どうでしたか」
と俺が聞くのさえ分かってましたというかのように、まずはお土産持ってきたからとリビングに入ってくるドズルさん。
その後ろで俺も食べられるやつなのかと言いながらついて来て、いつものドズぼんをこんな間近で見ることが出来て、俺はどこか嬉しさを感じていた。
ドズルさんが持ってきたのは温泉饅頭と温泉煎餅だった。饅頭は見たことはあったけど、温泉煎餅なんてあるんですねと言うと、僕もびっくりしたんだよねと笑いながらお土産の箱を開けてくれた。
その後は三人で仲良くお土産を食べて、談笑して。気づけば俺は二人の間に挟められるようにソファに座っていた。
ドズぼんは俺の背中の後ろで手を繋いで座っていた。二人は言葉もあまり交わさないでそういうことを俺のそばでも平気でやる。きっと指を絡ませる繋ぎ方をしているんだろうと妄想をしてしまう俺にますます恥ずかしくなりながら、俺は目の前の饅頭に集中した。
「おんりー、なんか緊張してる?」
些細な異変に敏感なドズルさんがそう聞いて俺の顔を覗き込んだ。大丈夫ですと目を逸らせば、そこにはニタリ顔のぼんさんがいて本当に目のやりどころに困る。
「そりゃあ恋人の前なら緊張するよな、おんりーちゃん?」
ぼんさんの問い掛けにうんともすんとも言えずに視線は饅頭へ向けた。あと一口なのだが、緊張で食べ切ることが出来ない。その内にドズぼんが左右で騒ぎ出したから落ち着く暇もない。
「あ、ぼんさん、ズルいですよ、おんりーの視線奪って」
「こっち見てくれたんだからずるくないずるくない」
ドズルさんの声とぼんさんの笑った声が俺の中で交差して頭がどうにかなりそうだった。そうやってケンカじみたことで言い合う癖に、俺の背中の後ろでは手をしっかり繋いだままなんだよなぁ。そんな二人が好きなんだなと思うと、俺は耐えられなくなってソファから立とうとした。