第3章 おらおん
水曜日はおらふくんの日。
今日は喫茶店での待ち合わせ。ラフな格好をしている室内と違って、こういう場所へ出掛けるおらふくんは、オシャレでグッと大人っぽくなるからちょっとだけドキマギする。
しかし、待ち合わせの喫茶店でおらふくんの姿を見つけると、たちまちその無邪気さをあらわにしてこちらに大きく手を振った。笑うとかわいくなるおらふくんの顔、ズルいなぁと思う。
「待った?」
おらふくんの向かいの席に座って俺は聞いてみた。するとおらふくんは楽しそうに、それがなとこう話した。
「おんりー、いっつも早く来るやん? だからたまには僕が早く来てみようと思って!」
とおらふくんは笑うが、俺は彼の性格をよく知っている。おらふくんはやると決めたらとことんやるタイプだ。
「それで、何時からいたの?」
「一時間前なんやけど?」
俺の質問にケロリとした顔で答えるおらふくん。そこまで待ってなくてもいいのにと言うと、一度はおんりーの気持ちを知りたかったとか訳の分からないことを言い始めた。
「何それ」
と俺が笑いながらそう返すと、おらふくんはますます笑って店内中によく響くくらいだった。
「それよりさ、何か頼も。何飲むん?」
俺がその笑顔に見取れていたからか、おらふくんがメニューをテーブルの上に広げた。
「ん〜」
メニューを見ようと前屈みになると、同時におらふくんも前屈みになったらしくて額同士がぶつかった。俺が何か言うよりも早く、おらふくんの明るい声が飛び込んだ。
「あははっ、僕とおんりー息ぴったりやん」
おらふくんの笑った声と顔はやっぱり好きだなぁと思う。するとメニューへ視線を移していたおらふくんと再び目が合った。
「どうしたん?」
「いや、なんでも」
おらふくんとの何気ない会話ややり取りも好きだなぁと思う。