第2章 ぼんおん
火曜日はぼんさんの日。
ぼんさんは友達のような感覚。
そして、俺が複数愛者でも真っ先に受け入れてくれた優しい人で、大人の余裕を感じる。時々物を落としたりしてそそっかしい部分は子どもというより、弟みたいなんだけど。
「今日は何食べる?」
ぼんさんが台所に立って聞いてきた。自炊でもするんだろうか。といっても、今は昼の時間でもないし、朝ごはんは食べてきた。別になんでもと答えると、じゃあこれ、とお酒のおつまみのような菓子がいくつも出てきた。
「俺、酒は飲まないんですけど」
「俺の家に酒のつまみ以外あると思う?」
飾り気のないぼんさんは、俺と恋人になっても特に変わった言動は取らなかった。いつも通りぼんさんの家でダラダラ過ごして、ダラダラ会話して。
そういえば、と俺が持ってきたバックから手作りのクッキーを取り出すと、ぼんさんは分かりやすく嬉しそうな顔をした。
「それ何? おんりーちゃんが作ったの?」
「はい」
「それはつまり……」
「自分が食べるために持ってきました」
自分で食べるのかい。冗談だと分かっているのか、半笑いのままぼんさんはツッコミ役となる。その笑顔が見たいだけなんです、とは言わないまま、一緒に食べませんかと提案すれば、もちろんと返事をした。
「おんりーちゃんの手作りだから味わって食べないとね」
「大したことないですよ」
「ふふっ、おんりーちゃんの味はこの後味わうからね?」
「何言ってるんですか、ぼんさん……」
ちょいちょい危ない発言をするのもぼんさんだけだ。ぼんさんは俺の頬に触れながらニヤリと笑った。イタズラっぽく笑う顔についつい見取れてしまいながら、俺はこのぼんさんの表情に惹かれたんだなと心の中にだけ密かに認めるのだ。