第2章 蒼炎を喰む※荼毘
空を見上げていた男が、ゆらに気付いた。
目が合った瞬間に、平然を装う演技すら出来ない。
自分を見つめる青い目に、吸い込まれる様に、ただ見つめた。
「……散歩するにはいい夜だな。」
男の声が耳に聞こえると、脳が痺れた。
しっかりしろ、目の前の男は間違い無く、一般人じゃ無い。
「……ここは、私有地だけど?」
グッと崖を掴んでいるゆらの手に力が入った。
そんなゆらを見て、男は目を細める。
「…ツレを待ってるんだ、合流したら『すぐに』出て行くさ。」
ゆらの問いに、男は笑って答えた。
その妖しい笑みに、胸が苦しくなる位痛んだ。
こんな感覚は初めてだ。
まるで個性が目覚めた時の、あの高揚に似ている。
「ああ…そう、一緒に待ってあげようか?」
取り敢えず、縛り付けてから。
ゆらはそう言うと、手の平から鎖を出して、男に向かった。
逆に男の手から蒼炎が吹き出して、ゆらに向かう。
男と同じ目の色をした、綺麗な蒼炎に、ゆらは目を細めた。
蒼炎を避けると、ゆらは鎖を男に向けて放った。
このまま鎖に捕まってくれれば楽だったが、男はそのまま上に飛んで、鎖を避けた。
ああ、本当に私は高揚でこんなにも違う。
男がそこに逃げるのは分かっていた。
「ー捕まえた。」
ゆらは男の背後に行くと、彼の右腕を左手で掴んだ。
今度は拘束具が出て、男の手首とゆらの手首を拘束した。
空中でバランスが崩れて、そのまま2人とも地面に落下する。
下敷きになっている男が顔を顰めながらゆらを見上げた。