第2章 蒼炎を喰む※荼毘
(え、こんなに早くチャンス到来?)
ゆらは高鳴る鼓動に胸を抑えた。
ゆらはソッと、綠谷の後を付いて行く。
綠谷はどうやら、プッシーキャッツと一緒に居た男の子に会いに来たらしい。
夕飯を食べていない男の子に、綠谷はカレーを持って来たらしい。
(ー…尊い…。)
ゆらは2人の姿を見て、目を瞑る。
ダメだ、ここでいきなり綠谷を縛り付けて、ニヤけて鑑賞していたら、ソレこそ人としての何かを失う。
流石に自分の情欲に引きながら、ゆらはソッと2人から離れる。
そのまま崖に沿って歩いて行って、無駄に高まった昂りを沈静させる。
(誰かを縛ってしまう前に、少し迂回して宿舎に戻ろう。)
今日は月が綺麗で、見上げると星空が空を覆っている。
気持ちを落ち着かせる為の散歩には、うってつけだった。
「ー…っ。」
ゆらは人の気配がして、その方向を向く。
(……1人…。)
ソレは知っている気配では無かった。
ここはプッシーキャッツの私有地と言っていた。
彼女達と雄英のメンバー以外がここに居るのだろうか。
戻って、先生に知らせるべきだ。
そう思っているのに、ゆらは足が勝手に歩き出す。
惹かれるように、惹きつけられる様に、この感覚に抗えなかった。
ゆらは気配の頭上に来ると、下に人影を見つけた。
暗闇に紛れて、その青い目だけが空を見上げていた。
黒髪の男を見た瞬間に、全身の毛が逆だった様な衝撃を受ける。
この衝動は、縛りたいだけじゃ無い。
先ほどの綠谷に感じた高鳴りなんて、比じゃなかった。
アレを自分のモノにしたい。
縛り付けたいの感情の先があった事を、自分でも初めて知った。