第6章 蒼炎を慈しむ※荼毘
荼毘は、ゆらの顎を掴んで、ゆらの顔をじっと見た。
「?」
ゆらは荼毘の行動の意味が分からず、不思議そうに荼毘を見ている。
(…スッキリした顔しやがって…。)
不満をブーブー言っている割には、スッキリした顔をしているゆらに、荼毘は手を離した。
「…ここに来れば、荼毘に会えるの?」
ゆらは身支度を始める荼毘に言った。
今度は荼毘が不思議そうな顔をしている。
「………俺と会い続けてどうするんだ?」
真剣に、ゆらの考えが分からなかった。
曲がりなりにも、ヒーローとヴィランだ。
「え?もう会わないつもりなの?」
ゆらは心底驚いた顔をする。
驚くのはこっちの方だ。
荼毘と会う事のデメリットは、ゆらの方が遥かに大きい。
分かっていて、どういうつもりで言っているのだろう。
荼毘はため息を吐いた。
「…お前、俺を捕まえるって言ったよな。」
「うん、ヒーローになったらね。」
「違うだろ、そんな関係で会い続けてどうするんだって聞いてるんだよ。」
荼毘の言葉に、ゆらは黙った。
「…そんなの分かってるよ…。」
会い続けても、結局何のみらいもない。
そんな事全部分かってて。
「会いたいんだよ。」
ギュッとゆらが荼毘の腕を掴んだ。
破滅的なこの腕だけでも、常に触れていたい。
ぎゅっと目を顰めたゆらの顔を見て、荼毘は手を伸ばした。
ゆらの頭を掴むと、グッと自分の方に寄せた。
今は一緒に居たいと言っている女は、ソレでも荼毘がヴィランとして目の前に現れれば、コピーを消した様に、荼毘を消すのだろう。