第2章 蒼炎を喰む※荼毘
楽しみと意気込んで、参加した強化合宿。
雄英を舐めていた。
こんなにもキツかったなんて…。
しかもひたすら個人の個性の強化だから、誰も縛れない。
個性がバレた今、心置きなく披露しようと思っていたのに、何とも悲しい。
「えっ、本当に抹消されてる。」
合宿2日目の夜、自分の手首とゆらの手首を繋ぐ拘束具を見ながら、拳藤は驚いた様に言った。
鎖は遠隔で使いやすいので、主に使っているが、自分が体内から出した拘束具だったら、相手の個性を抹消出来る。
自分の手首と相手の手首を繋ぐ拘束具は、リスクが高い為、普段は使わない。
個性を抹消出来たとしても、至近距離の肉弾戦になれば危うくなるから。
「コレで、轟と爆豪を捕まえたのか。」
鉄哲が興味津々に聞いてくる。
(もう簡単に拘束されないと思うけど。)
ゆらは2人の光景を思い出すと、残念そうに拳藤の拘束を解いた。
自分の力が発揮できる時は、いつも拘束したい相手を見つけた時だ。
それ以外は気持ちも昂らずに、粛々と課題をこなしていく。
体育祭までそう言った対象の同級生が居なかった。
爆豪と轟を客席で見た時に、初めて同級生にそんな衝動を駆られた。
(後綠谷…。)
ああでも、彼の個性とは相性が悪そうだ。
ソレでも拘束されて、個性を抹消された瞬間の困惑した顔の綠谷を、いつか見てみたいモノだ。
そう願えるだけで、雄英の生活を楽しめそうだ。
轟も爆豪も、機会があれば、リベンジしてくるだろう。
ソレもまた、一興だ。
ゆらはふと顔を上げると、森に入って行く綠谷を見つけた。
手にはカレーを持っている。