第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
「…そうなんだ…残念…。」
ゆらは不満そうに言った後に、グッと死柄木に当てた鎖に力を入れた。
「なら、死柄木が荼毘の代わりに遊んでよ♡」
後ろから死柄木の耳元に口を近づけた。
「場所変えよ?♡」
「…気色悪い…。」
死柄木は心底嫌そうにゆらの顔を掴んだ。
「…はぁ、荼毘は今この町に居る。」
諦めた様に死柄木は言った。
「見つけてみれば?」
死柄木のニヤッとした目が、掌の隙間から見えた。
「………まぁいいか…。」
探すのもまた一興だ。
ゆらは鎖を死柄木から外すと、そのまま上に飛んだ。
「ソレでは皆さん、また会いましょう♡」
次に会った時には、どんな対面の状況か分からないけど。
ゆらはニッコリ笑って、死柄木達を見下ろした。
「行かせるか!」
トゥワイスが自分をコピーして、一斉にゆらに襲いかかって来た。
ゆらは手から網状の鎖を出すと、襲いかかって来たトゥワイスの群を、網の中に捉えた。
個性抹消で、網の中に入っていたトゥワイス達が消えていく。
個性訓練合宿で、少しの間なら手から鎖が離れても抹消が使える様になった。
必殺技の強化で、鎖を網の様に出す事を考えた。
雄英にいれば、ゆらはどんどん強くなっていく。
今はゆらに対して、敵意を見せてこない死柄木。
いつか、彼と対峙した時に、その力に届いているだろう。
自分と同じ捕食者の目でゆらを見上げる死柄木を最後に見て、ゆらはその場から荼毘の元に向かった。
ゆらは荼毘を探す為に高いビルの上に向かった。
邪魔な構築物が無い上空では、月明かりがハッキリと地上を照らしている。
ゆらは丸くなっている月を見た。
アレから1か月だったんだ。
今日、荼毘に会える。
ゆらはその月を見て、そう感じた。