第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
ビルの屋上から、裏道に入って行く荼毘を見つける。
私はその姿を確認して、間違いなく笑みを浮かべているだろう。
体を前に倒すと、重力に抵抗する様に、向かい風が体を突き抜ける。
それは実際には向かい風ではなく、私の体が落下している風を切る音だ。
風を切る音が心地よく、私は近付く荼毘の人影に目を細めて笑った。
「荼毘!」
私が叫んで、やっと荼毘は頭上から降ってくる私を確認した様だ。
「っ仁美!」
荼毘が見上げて私の名前を呼ぶ顔は、私と同じで笑みが漏れている。
私に気が付いた時ははもう遅い、私の右手から鎖が伸びると、容赦無く荼毘に巻き付いた。
荼毘を拘束すると同時に、私は地面に勢いよく着地する。
私はゆっくり体を起こすと、拘束されて炎を出せない荼毘を見つめた。
「…荼毘…。」
荼毘の目を捉えると、私は満遍の笑みで荼毘を見返した。
「あいっ変わらず弱いね♡」
「…はぁ、相変わらずのイカれっぷりだな、仁美。」
そう言って、呆れた顔で笑みを浮かべる荼毘もまた、私をそそる。
「今日は何して遊ぼうか、荼毘。」
拘束を解いて、荼毘の蒼炎に焼かれそうになっても構わない。
初めて会った時の様に、誰にも邪魔されずに、2人だけの時間で。
遊ぼうじゃないか荼毘。